2023年1月11日

神戸市企業の挑戦 vol.3:ICTの力で、世界の課題を解決する〜神戸情報大学院大学

レポート

プロジェクト・エンングローブ x  関西学院大学商学部吉川研究室 ESG経営研究チーム

<連載/ESGインタビュー 〜神戸市企業の挑戦〜>
共創からはじまる「地球にいい」ビジネスとは何か?
気候変動や社会格差など多様な課題が山積する現代において、先進的にESG事業に取り組む神戸市内企業にプロジェクト・エングローブが迫ります!

関西学院大学ESG経営研究チーム
2022年より神戸市内企業のESG経営の研究を行う関西学院大学生チーム。 ESGに取り組む神戸市内の企業にインタビューを行い、経営の背景を知ることで、気づきや考えを議論する。ESG経営の課題や重要性を理解し、情報発信していく。

 

神戸情報大学院大学(KIC)学長代理
神戸電子専門学校 本部長
スウィフト・エックスアイ株式会社 代表取締役
Tankyu-X株式会社 代表取締役
福岡 賢二 氏

大学運営の指揮を執るとともに、アフリカ・ルワンダにおけるICT4D(IT技術を活用した経済開発)に先駆・草の根的に取り組む。アフリカにおけるICT人材育成、産業振興に尽力し、日本とアフリカの友好促進に貢献。2018年に米国航空宇宙産業との共同ベンチャー、スウィフト・エックスアイ株式会社を設立。

2013年、ABE(African Bussiness Education for youth アフリカの若者のための産業人材育成))イニシアティブが発表されたことをきっかけに、JICAと連携し、アフリカの33カ国から170名もの留学生を受け入れてきた神戸情報大学院大学(以下、KIC)。
KICの学長代理である福岡賢二氏より、情報通信技術(ICT)による社会課題解決を専門的に学べるKICの取り組みについて、また大学とは別に福岡氏が手がける途上国でのドローンビジネス展開や未踏空間の開拓・居住空間の革新などのベンチャービジネスについてお話を伺いました。

 

Q.社会の加速度的な変化に柔軟に対応する人材を育成されているKICですが、教育方針や取り組みをお聞かせください。
福岡:私たちの大学は、“Social Innovation by ICT and yourself(社会の課題をICTで解決する)“ をモットーとし、探究し続ける大学です。「探究精神」を具体的な「技法」として習得するオリジナルのプログラムを通して、多角的に社会課題を捉えて情熱を持って取り組める課題を見つけ出し、自分の得意技を磨きながら解決できる人材を育成しています。これまでにアフリカから来日した留学生の中には、本校で通信情報技術(ICT)による課題解決手法を学び、自国に戻り、途上国ビジネスの革新を担っている人材もいます。

 

Q.KICの原点とは何でしょうか?
福岡:創設者は私の父である福岡富雄で、現在80歳代後半ですが、今も現役でエンジニアとして活動しています。昭和30年代は日本が高度経済成長中の黄金期でしたが、父はコンピューターに魅せられたんです。マスプロダクションではなく、個別のニーズに合ったような、コンピューターの社会が来ると当時考えたんですね。そこで、いちからパソコン本体を組み上げてみたり、それによって得たノウハウをプログラミングの教科書として出版したりしました。先の時代を見据えて新しい価値を生み出し、コンピュータの教育機関である神戸電子専門学校を設立し、2005年に高度ICT技術者を育成するための大学院としてKICを設立しました。父が得た知識は今も本校に脈々と受け継がれています。

 

Q.福岡さんがICTの力で社会課題を解決しようと決意されたきっかけは何でしょうか?
福岡:1995年の阪神淡路大震災がきっかけで、私は所属していたグループメンバーと共に最先端のITを活用してボランティア活動を始めました。パソコン通信を使い、被災地内の避難所間情報伝達システムを開発し運用するという大規模な取り組みでした。この活動を通じて、コンピューターが利益を出すためだけのツールではなく、人の役に立つものだという認識が強まったんです。ITの力を使い社会課題を解決に取り組みたいという考えと覚悟が芽生えました。

 

Q.KICで様々な国籍の学生を育成しようと思ったきっかけは何だったのですか?
福岡:様々な国の人たちと交わることが好きで、本校を多様な人種の学生が集まる坩堝にしたいと思っていました。多国籍な学生と日本人学生が共に成長することで、お互いの刺激となり、視野が広がることも期待しています。
また、大手外資コンサルティング会社の出身である本校学長の炭谷と共に、国連の開発ネットワークを先導する機関である国連開発計画(UNDP)に携わっておりまして、ルワンダのITの専門家として活躍されていた山中敦史さんをコアメンバーとし、アフリカの地域別に「ICT活用による開発課題解決研修」を実施するなど様々な取り組みを続けて来ました。2013年には、修士課程のICTイノベーターコースプログラムを設立しました。最初は認知度をあげることに苦労しましたが、徐々に世界中の学生が興味を持ってくれるようになり、今は常に多国籍の人が混じり合う環境です。他の大学と比べて本校にはアフリカ、シリア、アフガニスタン、ミャンマーなどから来日した学生が多く、日本人の生徒数よりも留学生が多いのが特徴です。

 

Q.特にルワンダと親交が深いですが、どうしてなのでしょうか?
福岡:はじめは、ドイツ、フィンランド、ハンガリーなどヨーロッパを周り学生を勧誘していたのですが、一番最初に興味を持ってくれたのがルワンダの教育庁でした。
1994年に大きなジェノサイド(大量虐殺)があったルワンダでは、熟達した労働力人口層が少なく、10代から20代の若者を早急に育てることが求められました。ルワンダ教育庁委員会は「無知」がこの悲劇を引き起こしたと捉えており、二度と同じことが起こらないように、教育に力を入れられるようになったのです。ルワンダ政府の意向と本校の教育理念とが合致し、我々とルワンダ共和国との非常に密接な関わりが始まりました。

 

Q.どのように、アフリカからの留学生を受け入れる体制を整えられたのですか?
福岡:2013年に横浜市で開かれた第5回アフリカ開発会議において、当時の安倍首相がABEイニシアティブを表明しました。本校のアフリカからの留学生の人材育成を始めたタイミングと重なりましたので、積極的に受け入れをスタートしました。帰国後に起業し、成功を遂げる卒業生を多く輩出することで、さらに反響を呼び、2019年にはアフリカから33カ国170名もの学生が入学しました。
ICT分野でアフリカからの学生を受け入れた大学・大学院は、世界の例をみても本校のみです。その中でも関係性の深いルワンダからの留学生は圧倒的に多く、現在41人を受け入れています。
ルワンダはジェノサイドにより急激に落ち込んだ経済をICTの力で立て直し、その急激な近代化は「アフリカの奇跡」とも呼ばれています。現在も、ロボットやドローン、スマートフォン産業などを中心とした「ICT立国」を掲げており、そのため、本校とルワンダ政府とは非常に良好な関係を結んでいます。

Q.実際に、卒業生で成功した方はどのような功績を残されたのでしょうか?
福岡:ルワンダでオンラインショッピングのプラットフォームを構築し、日用品や食糧、農作物など様々なものをネット上で販売する「HEHE LABS Ltd(へへラボ)」という会社を立ち上げたクラリス・イリバギザさんという卒業生がいます。Forbes誌のアフリカで最も将来性のある30歳以下の起業家30にも選出され、ルワンダを代表する女性若手起業家として注目されています。他にも、携帯電話とArduinoを使ったワイヤレスセンサーネットワークによる奥地での「統合型洪水警報システム」や「奥地の村落のための遠隔治療システム」を開発している卒業生がいます。本校の卒業生の活躍により、海外の国際機関が集まり、途上国のICTスタートアップエコシステムを牽引しています。

 

Q.ルワンダではICTを用いたビジネスが盛んなのでしょうか?
福岡:ルワンダでは、IT事業の起業を促進する若者向けのインキュベーション施設K-LAB」を起点に、ICTを使ったソーシャルビジネスが盛んです。養殖魚の成功率をあげるために通信昨日と水質センサーを搭載した機器を養殖場に設置し、webサイトから水質を確認できるシステムを構築した「Aqua Safi Ltd.(アクア・サフィ社)」や、子ども向けのオンライン・コーディング・コースを開発した「Codeck(コデック社)」など、その活躍は目覚ましいものがあります。近年は、ルワンダ人だけではなく、アメリカ、フランス、ドイツなどの世界中の人々がルワンダに集まってきています。
神戸市は、ルワンダをフィールドとした起業体験プログラムを実施したり、ルワンダ・スタートアップ企業ピッチイベントを実施するなど、ルワンダとICT関連ビジネスで深い繋がりがあり、その発展に深く関わっています。ルワンダ留学生を積極的に受け入れている本校においては、ルワンダをはじめとする開発途上国の人材育成や社会発展に寄与した実績を認められ、2019年にJICAから理事長賞をいただきました。

 

Q.急速に技術の発展が進むと、倫理的な問題も出てくると思われますが、対処するための教育は行われていますか?
福岡:必修で技術者倫理という科目を設けています。専門家の行動が道を外れても、一般の人には分かりづらく、それゆえに専門職は自らを律することが求められます。儲かるからといって、度を超えると組織ぐるみのデータ改竄等の不正問題が起こり、社会の安全を脅かすことがあるのです。倫理を持って、技術開発の本質を学ぶ必要があると考えています。

 

Q.福岡さんは、米国航空宇宙産業との共同ベンチャー企業を立ち上げるなど、様々なビジネスも始めてらっしゃいますね。どのような事業なのでしょうか?
福岡:未踏空間の開拓すなわち空の産業の法律整備や準備を手がける航空宇宙工学サービスの「Swift Xi(スウィフト・エックスアイ)」や、リニアモータ・エレベーター技術を用いて自由な建築を実現させる「Linear Motor Elevator(リニアモータ・エレベータ)」の展開など活動は多岐にわたります。途上国ビジネスの革新を探究メソッドで切り込む「TankyuX(タンキューエックス)」では、東京大学発のスタートアップであり、タンザニアで”無電化地域に光を灯そう”という取り組みをしているWASSHA株式会社のアフリカ人材育成をサポートする活動も行っています。
アフリカではドローンの開発と活用が既に進んでいます。例えば、シリコンバレーのジップライン社が、ドローンを利用した医療物資の調達に取り組み、医療問題解決に取り組んでいます。一方、現在の日本では、ドローンに対して理解や規制など問題が山積しています。その解決糸口として何か貢献するためにした施策の1つが、ドローンの学校の設立です。今、万博で空飛ぶ自動車を飛ばすなど日本は息巻いていますが、我々は日本政府と一緒になって空の産業革命の素地を整えていく予定です。

Q.居住空間の革新を担う「Linear Motor Elevator」の取り組みについても教えてください。
福岡:居住空間の革新においては、実はエレベーターがネックになっています。エレベーターが湾曲できないから建物の形に規制がかかってしまうんですね。リニアモーター・エレベータのような技術を用いれば、今まで実現できなかった構造の建物を建てることができます。今後も真面目にユニークな取り組みをしていきたいと思っています。

 

 

最後にルワンダ出身の留学生であるHABIMANA Remyさんに、ルワンダの紹介やご自身のバックグラウンド、KICや日本での生活、ご自身の研究をご紹介していただきました。Remyさんは、Googleハザードがまだ普及しておらずGPSがほぼ使えないルワンダの状況下で渋滞問題を解決すべく、ラジオのインフォメーションを活用した交通界におけるテクノロジーを研究されています。KICで学んだ知識を活かし、自国に戻ったら、交通課題を始めとする社会問題を解決する仕組みを作りたいそうです。

〜ルワンダってこんな国〜 
ルワンダはとても小さな国で、赤道直下に位置する。
近隣国:ウガンダ共和国・コンゴ民主共和国・ブルンジ共和国・タンザニア連合共和国
通称:千の丘の国
人口:1300万人以上
面積:36340㎢
言語:ルワンダ語、英語、フランス語、スワヒリ語の4か国語
日本との関係:1962年に外交関係を樹立。交通、エネルギー、水、教育やICTに力を入れて連携している。
19世紀はドイツとベルギーに植民地とされており、1962年7月1日に独立。
世界で最も女性の議会参加が多く、またウムガンダ(ルワンダ国民の祝日)にコミュニティー活動が義務付けられている。

 

大量生産・大量消費・大量廃棄してきたこれまでの経済システムが引き起こした環境破壊や人権侵害問題などと向き合い、多様な国籍の留学生を受け入れ、ルワンダをはじめアフリカ現地で多くの人に学びの機会を与えるメカニズムを作っている福岡氏。探究プログラムとICT教育を起点とした学びの土壌を神戸やアフリカで耕し、また実践する場として多岐に渡ったベンチャービジネスまでも手掛けられ、常に未来に向けた新たな可能性を模索されています。

 

今回のインタビューを通して、関西学院大学ESG経営研究チームのみなさんから、次のような感想をいただきました。 

今まで目を向ける機会が少なかったルワンダを含めたアフリカの現状や、そこでの活動を知ることができ、視野が広がった気がします。また、ビジネスにおける日本の遅れについて再認識すると同時に、先を見据え世界の最前線に立とうとする福岡さんの姿勢に感銘を受けました。ICT技術はこれからの時代、必要不可欠なものとなり、私達にとってもより身近な存在になると考えられます。遅れを取り戻すために、次世代を担う私たちができること、日本であるからこそできることはないか、今一度自分自身に問いかけたいと思います。

Interview by
関西学院大学商学部吉川研究室 
ESG経営研究チーム
“プロジェクト・エングローブとともに、神戸で活躍するESG企業を研究中!”
西野紗奈・三澤里佳子・古妻未優
伊藤りん・小黒翔平

ESG経営研究チームメンバーの活動・意気込み
神戸市内企業のESG経営の研究を行っている。 研究の中で見つけた課題や気づきについて自分たちなりに考えた解決策を議論し、さらに理解を深め、神戸市のESG経営の取り組みを発信していく。

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