2022年11月21日

神戸市企業の挑戦 vol.1:持続可能なコーヒー産業への道のり〜アルタレーナ

レポート

プロジェクト・エンングローブ x  関西学院大学商学部吉川研究室 ESG経営研究チーム

<連載/ESGインタビュー 〜神戸市企業の挑戦〜>
共創からはじまる「地球にいい」ビジネスとは何か?
気候変動や社会格差など多様な課題が山積する現代において、先進的にESG事業に取り組む神戸市内企業にプロジェクト・エングローブが迫ります。

エングローブ第1期を経て、今年度もフォローアッププログラムに参加しながら精力的に活動する株式会社アルタレーナの八木俊匡さん。八木さんの問題意識や現在の活動、未来に思い描く世界のあり方などについて、プロジェクト・エングローブの理念や活動に関心を寄せる関西学院大学の学生チームが伺いました。

 

株式会社アルタレーナ

芦屋、神戸、大阪と3店舗運営の傍ら、コーヒー生豆の買付から焙煎、抽出に至るFROM SEED TO CUPを体現するコーヒーの川上から川下までの業務全般を行い、持続可能でオーガニックなコーヒーのある暮らしを提案している。また一杯のコーヒーCO2の可視化・削減など、サステナブルで透明性のある循環コーヒー経済圏の創出に挑戦する気候変動アクションであるValue_wayプロジェクトをスタート。

Q: アルタレーナさんでは、エングローブでのESGプロジェクトをはじめ、環境に関する様々な取り組みを行っていらっしゃいますね。どういった思いで、このような活動をされていますか?

八木:うちは中小企業の中でも小規模事業者にあたるので、”ESG”とか”社会的な義務がある”とかいう感覚を意識してやっているわけではないです。ただ、どうせ何かやるなら、コーヒーを扱いながら世の中の役に立ちたいという思いが根底にあります。

”from seed to cup”というのがあります。簡単にいうと、“種の生産者さんが苗を作って育てるところから、お客さんの手に届くところまでのすべての工程を適切に作り上げて初めておいしいコーヒーになる” ということです。おいしいコーヒーはまぐれ当たりではできません。日本の農家さんが野菜を丁寧に作っているように、大量生産・大量消費の加工品のように見えるコーヒーも地道で丁寧な手作業によって作られています。こうしたコーヒーの背景を知ったときに、僕たちもそうした事実を消費者に伝えつつ、生産の中心である開発途上国でもそれが持続的にできる販売の仕方をしないといけないと考えるようになりました。

また、生産国においては、気候問題はコーヒーの品質にダイレクトにつながります。それは僕たちのビジネスに直結する問題でもあるんです。世の中の美味しいコーヒーのほとんどがアラビカ種という原種なのですが、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change/ 気候変動に関する政府間パネル )の気温上昇率に基づいて作った予想によると、2050年にはアラビカ種はほとんどなくなるそうです。というのも、アラビカ種はとても繊細で遺伝子の配合の交配が少ないため、外部環境が変化するとすぐに枯れてしまうからです。コーヒー豆ができなければ僕たちも商売ができなくなります。気候問題に取り組むことは自分たちの持続可能な商売にも繋がるんです。

 

Q: アルタレーナさんでは、フェアトレードを行っているということなのでしょうか?

八木:アルタレーナでは、概念としてフェアトレードなコーヒー豆を扱っています。フェアトレードという言葉は、フェアトレード団体から認証を貰った製品を表す固有名詞的な話と、適正な取引をしようという概念的な話とに分かれていると僕は思っています。両者は本来はイコールであるべきなのに、実際はイコールになっていない。認証の方は劣悪な環境や低賃金の改善といったマイナスなものをどうやってゼロの状態に近づけるかという取り組みで、フェアトレード認証のあるコーヒー豆は、認証を受けていないコーヒー豆よりも高く販売されています。一方で、仮に品質が高くないコーヒーだとしてもフェアトレードの認証を取ることができるんですよね。これって消費者サイドからすると全然フェアじゃないですよね…(笑)だから、うちはコーヒーの美味しさで価格を決めているんです。場合によっては、フェアトレードで取引するよりも2倍以上の高い価格で取引することもあります。

Q:なるほど。フェアトレードという言葉の背後には、そのような実態があるのですね。概念でフェアトレードを行っているアルタレーナさんの手法こそ、本当の意味での「フェア」だなと思いました。八木さんは今、コーヒーカスに着目したプロジェクトを進めていると伺いましたが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

八木:もともと、コーヒーカスを捨てるのは勿体ないから何かに使えないかなぁと思っていました。そうしたときに、パリ協定で、バイオ炭(自然の有機物から作られた炭)を農地に巻くと炭素の固定につながると世界的に認められたのを知り、「これ、コーヒーカスにもできるんじゃないか?」と思いついたんです。ゴミを減らしてCO2も減らせる。さらに、通常、事業者はゴミを捨てる際にお金を払わないといけないのですが、コーヒーカスを提供することで、逆にお金をもらえるようになる。これは錬金術ですよね!環境も農家さんもコーヒーカスを提供する人も、みんなハッピーになります。それに加えて、2050年のコーヒー豆絶滅が解決するなら、もっとハッピーです!

 

Q: 八木さんのアイデア実現のために出てきた課題は何ですか?

八木:コーヒーカスを活用するには、他のゴミと混ぜずに分別する必要があります。コーヒーカスの分別で損をする人はいないのですが、自分がするとなると面倒だという人が大半かと思いますので、市民にそれをしてもらうのは相当先のことだと考えています。だから、まずは事業者に浸透させるのが善案です。

しかし、ここには大きな壁があります。それは法律です。廃棄物を回収するには許可が必要なんです。廃棄物は大きく分けて、産業廃棄物と一般事業廃棄物があります。産業廃棄物は工場などで出る廃棄物で、これはある程度リサイクルの仕組みが既に整っていることが多く、申請先も県単位になっています。一方でお店などで出る一般事業廃棄物についてはそれぞれの自治体に任されていますが、新規の一般事業系廃棄物取扱は極めて困難です。したがって私たちが勝手に回収すると廃棄物取扱法違反で捕まってしまうんです。

englobeは神戸市が主催しているので、色々取り組みを行う中で、環境局の方を紹介してもらってお話をしながら、どうにかこのアイデアを実現できる方法はないかと模索しています。ですが、非常にセンシティブな話なので、具体的に「このような計画で、このように進めるから絶対大丈夫なんですよ」ということをどう証明していくかということが課題です。

現在、神戸市と連携してプラスチックや食品の廃棄等を回収するモデルをやられている企業さんが神戸市内にあります。その企業さんに、一緒にコーヒー版でやりませんか?という話を持ちかけています。

 

Q: 一般廃棄物として処理する許可をどう取るかという大きな壁があるのですね。それ以外にもぶつかった壁はありますか?

八木:仮に回収ができた場合でも、今度はそれをどこに保管するのかという問題が出てきます。というのも、コーヒーかすの約80%は水分なので、保管しているうちにカビが出てきてしまうんです。それを乾燥させるにはどうするか、どこでやるか? また、それをさらに炭にするという出口を目指すなら、専用のプラントが必要になってくるんです。普通のプラントでも炭にすることはできますが、まだ水分があるので燃えないんです。だからしっかり燃えるような特殊なプラントが必要で、それをどこに建てるかも課題です。当然プラントの建設に係る費用は億単位で大きな投資となるので、それをうちができるのかなど課題はたくさんあります。

さらに、コーヒーカスの乾燥がうまくいって炭ができた後には、それを農地に撒いてCO₂を固定してはじめて炭素削減につながります。ではその農地はどこにあるのか? 農家さんの中には畑に炭を入れたくないという方もいれば、肥料は生産者さんごとにこだわりがある方もいらっしゃいます。そういった状況で、炭をいくらで誰が販売するのかなどの問題もあります。

 

Q: では、コーヒーを肥料にするメリットは何でしょうか?

八木:それに関しては、コーヒーや土壌を一つずつ調べないと分かりません。なぜなら要因は一つではなくて、たまたま結果が良くなってるだけの場合もあるからです。実証実験や経過観測をして他のパラメーターを取るなどして、専門家の方と何年もかけて測定を行っていかないとわからないというのが答えです。ただ、九州や関東での事例はあるので、参考にさせてもらいながら進めていこうと思っています。分析に関しても、炭素が本当に固定しているのか、それによって本当に土が良くなり、生産量が上がっているのかという2点の結果が必要なんです。例えば炭素は固定できたけれど、作っている野菜の品質が下がるのならば誰もやってくれませんよね。なので、両方の分析が必要です。

 

Q: 実用に漕ぎ着けるまでは、かなりたくさんのプロセスが必要なのですね。このような取り組みの先進事例はあるのでしょうか?

八木:事業者を例に出すと、日本より海外の方が廃棄物の回収に関しての事例はあります。なぜなら法律も違いますし、自治体の関与の大きさにも違いがあるからです。代表的なのはロンドンで、今はコーヒーカスを回収し再資源化するプラントを作る専門の会社があるように、循環のモデルが結構できています。そこからコーヒーの油分を取って、市バスの燃料に使うなどの事例があるので、「神戸でもやりませんか?」と折に触れて話しています。「非常にいいことですね」という話にはなるのですが…。実現させるためにはしっかりとした計画を提示するしかないんでしょうかね。模索しながら進めています。

 

Q:最後に、今後取り組みたいことを教えてください。

八木:生産地での実態調査や、CO2排出量を見える化するためのプラットフォームづくりです。僕たちの取り組みは、最終的な消費活動のところまでをデータで追える状態にならなければわからない。なので、そのプラットフォームを作ろうとしていて、現在はソフト開発を行っています。

消費者がどこでどのように最終的な行動を取っているかを把握するのは難しいですよね。僕たちは、消費者にSNSへ投稿してもらう形で把握することを考えています。そのデータをもって消費量を確定するみたいなイメージです。消費者が自分からやろうと思えるようなものにしたいと思っています。

今回のインタビューを通して、関西学院大学生のみなさんから、次のような感想をいただきました。 

この度は貴重なお話をありがとうございました。
お話を通して、RIO COFFEEさんは、持続可能な世の中を創っていくための模範的企業だと感じました。環境問題や社会課題に対して取り組むことが、義務的なことではなく「当たり前」として捉える経営方針は、今後の企業の在り方の理想像だと感じます。また、環境問題の解決には、時間・お金・労力などに加え、一人一人の社会課題に対する「当事者意識」とそれに伴う行動が必要不可欠であり、ESG経営の難しさについても考えさせられました。
持続的な未来を創るために、ESG経営に対する私たち自身の貢献の在り方をこれからも模索していきたいと思います。2050年にも美味しいコーヒーを多くの人が飲める未来が実現することを私達も願っています。本当にありがとうございました。

Interview by
関西学院大学3回生 商学部吉川研究室 
ESG経営研究チーム
西野紗奈・三澤里佳子・古妻未優
伊藤りん・小黒翔平

ESG経営研究チームメンバーの活動・意気込み
神戸市内企業のESG経営の研究を行っているう。 研究の中で見つけた課題や気づきについて自分たちなりに考えた解決策を議論し、さらに理解を深め、神戸市のESG経営の取り組みを発信していく。

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