2022年3月25日

オープンゼミ 実践編第5回レポート IKEUCHI ORGANIC株式会社「2073年までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る」

レポート

ゲスト講師は、愛媛県今治市のイケウチオーガニック株式会社の池内計司代表です。イケウチオーガニック株式会社は1999年に「最大限の安全と最小限の環境負荷」をコンセプトに自社ブランドを立ち上げ、ライセンス生産が主流のタオル業界に一石を投じ、現在では自社ブランドで運営されるオーガニックコットン専業のファブリックメーカーに成長。SDGsにおいては「12つくる責任つかう責任」に特化し、全商品のトレーサビリテイを原材料から商品まで公開するなど、先進的な実践も数多くされています。この日のオープンゼミでは、タオルの品質を食品の安全基準までとことん突き詰めてきた取り組みと、その根幹にある企業の思想を語っていただきました。

イケウチオーガニック代表の池内様

◎織布ではなく、食布を作る

イケウチオーガニックの安全性へのこだわりは、原材料の綿花を作るところから現れます。「綿は食べない野菜」という考えのもと、遺伝子組み換えでない種を使い、3年以上、農薬・化学肥料を使用していない畑で栽培、生産農家ともフェアな条件で取引された綿花のみを使っているのだそうです。さらに昨年からはタオルを縫製する糸まで、オーガニックのものを使うようになったと言います。このように、どのプロセスをとっても安全なタオルの製造を目指し、いまや食品の安全性基準を採用しているとのこと。自らのことを「織布工場から食布工場へ」と形容しましたが、まさに通常のタオルの概念を超えたタオルが作られているのです。

◎農家の持続可能性を支える取り組み

契約しているタンザニアの綿花農家の暮らしを改善する試みも継続的に行っているそうです。Teacher’s Houseを作って僻地の村に教師を呼び寄せ、人々に教育を受けさせる。また、井戸を掘って寄贈するなど、農家が安心して安全な綿花を作り続けられるような援助をしているとのお話も共有されました。イケウチオーガニックのいう「つくる責任」は、材料よりも前の段階までを視野に入れているのです。一過性ではない持続的な関係構築が当たり前のように行われていることが、お話から伝わってきました(使用する原綿はREMEI AG によって管理されているとのこと)。

講演会場の様子

◎最小限の環境負荷への挑戦

環境負荷軽減の取り組みも注目に値します。たとえば染色のプロセスは、タオル作りにおいてもっともエネルギー量がかかるのですが、人体に安全で環境負荷の少ない染色を目指すローインパクト・ダイという考え方に基づいて染色しているそうです。また、染めた時にでる廃水も、日本で一番厳しい瀬戸内海の排水基準(COD12PPMレベル)をクリアする浄化施設で照らし、バクテリアの力を借りながらきれいにしているとのお話でした。さらに、IKEUCHI ORGANIC が使用する電気は、現在は100%風力発電由来のものなので、企業活動の中で生じてしまう環境負荷を最小限にとどめようとしています。その風力で織られたタオルは、「風で織るタオル」という呼び名通り、やわらかく包み込まれるような感触に仕上がります。

◎つくる人、つかう人が共鳴し、ストーリーをともに紡ぐ

池内さんは、なによりもお客さんの声をしっかりと聴くことを常に心がけてきたそうです。「お客さんが目を輝かせてくれないものは作ってはいけない」。ものづくりのプロとして、お客さんがどっちの方向に行きたいのかを察知する感度が重要なのだと語ります。また、「完結しないストーリーを作りたい」という言葉も印象的でした。お客さんに届くまでのところで完結してしまうストーリーをもったプロダクトが多い中で、イケウチオーガニックがこだわりたいのは、お客さんとともにストーリーを作っていくこと。その開かれたコミュニケーションが、多くのファンが楽しみに使い続けてくれるタオルの秘訣なのだということがよくわかりました。最近では、もともとのファンやユーザーが社員になる例も増えてきているそうです。熱い思いとユーザーとしての実感と目を兼ね備えた人たちの協働によって、イケウチオーガニックのタオルが進化し続けているのです。

ものづくりに携わるすべての人々(農家、生産及び加工工程、ステークホルダー、消費者まで)が笑顔になるオーガニックな関係を目指し、挑戦を続けるイケウチオーガニック。周りが求めるものよりも常に高いところを目指し、工夫と努力を重ねていらっしゃいました。お話をうかがって、自分達が何者であるのか、何をしているのかを俯瞰して考えて言語化できることが、社内に対しても社外に対しても通じるブランド力なのだと思いました。「赤ちゃんが食べられるタオル」しかり、「風で織るタオル」しかり、「織布工場から食布工場へ」しかり。つくる人にとってもつかう人にとっても、地球環境にとっても持続可能なものづくりの理念と、それを形にする実行力に脱帽する90分でした。

当日の講演の様子は以下のyoutubeからもご覧いただけます。

撮影:Life Journey Inc.

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