フロンティアラボ 第五回「アイディエーション」開催レポート

フロンティアラボDay8-9はおよそ1ヶ月ぶりの神戸現地での開催

1日目は市内のコワーキングスペース 120 workplace kobeにて、2日目は六甲山にあるカフェTHIRD PLACE ROKKOでワークショップを行いました。緊急事態宣言があけ、メンターも現地入りし、市内企業とクリエイティブパートナーによる顔を突き合わせたトークが実現。オンラインとのハイブリッド形式で、熱い議論が交わされた2日間でした。

この2日間のテーマは「アイディエーション」。各チームがこれまでの議論をふまえて、現時点での事業ビジョンと事業領域について発表しました。どのチームの現況に対してもメンターは鋭いコメントを飛ばしてチームの思考をほぐし、新たな知見を入れることで思考領域を広げていきました。ここでは、メンターのコメントを一部紹介しつつ、議論の輪郭をなぞっていきます。

◎「測る時代」の到来

メンターの水野さんによると、「10年ほど前にこの種のワークショップでは、みんなゴールがアプリ開発だったが、今は何かを測ることにこだわっているチームが多い。それだけ求められる時代になったということ」というコメントがありました。実際、今回は何らかの測定による可視化を事業のプロセスに置くチームが複数あります。例えば、センサーの力でモノとヒト、環境とのコミュニケーションをより円滑にしようと探求するチームや、人間一人一人の幸福が地球の幸福につながると考え、ウェルビーングを探求するチーム。これらのチームは、見えたり聞こえたりする形で現れていないものをいかに測るのか？という問いを持ちながら、アイディア探索を続けています。

メンターからは、「測ったデータをどう活用するのか、測る先に何を起こすのかを考えるべき」（内田さん）という意見や、「比べる、可視化するというのを徹底してしまうと、そこからダイバーシティを失ってしまう。測ることで失われる多様性についても考えるべき」（永田さん）というハッとさせられる意見もありました。さらに、測る対象についてもこれまでとはスケールが変わってきています。「これまでは地面の上に見えているものしか測っていなかったが、これからは地球という全体を測るようになっていくだろう」と永田さんがおっしゃいました。このようなコメントに対して、参加者からも「これまでは地域内や国の中だけで閉じていた問題が、地球というスコープになることで大きくなっていく。様々な問題の解決についても国を超えて地球全体で考えないといけないと思う」というリアクションがありました。

◎不都合な真実との付き合い方

もう一つ、特にESGを掲げる本プロジェクトにおいては逃れられない問題についても、メンターの水野さんが言語化してくださいました。それは、たとえばコーヒー産業を見た時にわかりやすく見えてきます。「フェアトレードなど、プロセスの透明化についてこれまでも散々検討されてきて、それが実際、付加価値になる」。一方で、気候変動等の環境の影響は大きく、「それをやりつづけることが持続不可能になるという不都合な真実」も隣り合わせの現実なのです。「その事態をどう乗り越えるのか？コーヒー産業にいながらコーヒーのことをしない、というような思い切った発想もあり」とおっしゃっていました。

永田さんからも、持続可能性と成長のバランスをとることが重要というコメント。今後コーヒーが奪い合いになるような時代になった時、今のまま自分たちがあり続けようと思うとしたら、どういう顧客とつながればいいのか、どうやって産地と付き合っていくのか、代替ビジネスモデルを提案するのか？など、様々な問いが出されました。そのままでいるということ自体が難しい時代になっていくのです。

 

このような鋭い視点をメンターからいただきながら、ワークショップでは2日間の多くの時間をチーム内でのアイディア出しに費やしました。六甲山にはすでに秋が到来し、ひんやりとした空気に包まれていました。参加者全員の集合は叶いませんでしたが、六甲山に来た参加者にとっては、神戸の海と山と街の近さや、そのなかでの生態系のつながりを肌で感じるよい機会となりました。次回は事業ビジョンをかたちにするためのバリューチェーンについて考えるオンラインワークショップが続きます。

写真撮影: Life Journey Inc.