2022年7月15日

1期生インタビューvol.2 マルヤ靴店×福田まや

第1期生の活躍

エングローブ第1期に参加してくださったマルヤ靴店の片山喜市郎さんと、クリエイティブ・パートナーとして参加してくださったアートディレクターの福田まやさんに、エングローブ中の模索やその後の動きについて伺いました。

 

 マルヤ靴店
神戸本町で100年続く神戸最古の靴専門店。創業当初は神戸靴の原点であるオーダー靴の受注販売と学生靴の卸販売を主軸にしていた。約60年前から、長田の量産靴であるケミカルシューズ産業が盛んになったこと、オーダー靴の職人の高齢化等により、一旦オーダー靴の販売を中断する。しかし、近年スニーカー需要の拡大や、コロナ禍の販売先の縮小などにより、ケミカルシューズ産業が打撃を受けて神戸の靴産業の見直しが必要となっている状況で、マルヤ靴店は2021年に入ってリアペアコーナーの増設、靴の製造設備を導入。靴専門店として神戸の靴の再構築を図るべく、挑戦を続けている。

 

星庭 アートディレクター/デザイナー
福田まや
1985年生まれ、奈良県出身。Inter Medium Instituteで学ぶ。
関西・東京での広告代理店勤務などを経て、2012年に大分県・耶馬渓へ移住。
一貫してアートディレクションすることで、物語をもったブランディングを得意とする。また、過疎集落での田舎暮らしをもとに、地域と都市をつなぐプロジェクトや社会課題解決に向けてのデザインプロジェクトなど、さまざまな試みを行っている。

 


Q: まずは片山さんから、プログラムへの参加動機についてお聞かせください。

片山:今後、大量生産、大量消費という流れは減少していきます。神戸靴の産業もオーダー靴の文化から量産靴のケミカルシューズ産業、そして次の時代に合った新たな靴の市場開拓が必要と考えました。このプロジェクトでは、昔ながらのオーダー靴の文化、そして量産靴で培った効率の良い生産方法、また靴の新素材など様々な要素を掛け合わせて、今の時代に合った神戸靴を復活させたいという思いから参加しました。

 

Q: 福田さんは大分を拠点に、アートディレクター/グラフィックデザイナーとしてご活躍されていらっしゃいますね。チラシやロゴのデザインにとどまらず、開通前のトンネル内部を1夜限りのホテルにしてしまうなど、他の人ではなかなか発想できないアイディアを精力的に形にされており、活動の幅広さとそのクオリティに驚かされました。今回、エングローブに参加したのは、どのような動機からだったのでしょうか?

福田:2016年ごろから九州大学主催のワークショップで、デザイン思考や、SDGsなどの社会課題からのアイデア創出について学んできたことで、自身の学びが深まり、仕事に適用できることが増えてきました。今回の参加を通して、神戸の熱意ある会社やプロジェクト主催者と一緒に、デザイン思考をもとにしたアイデアや、トータルにアウトプット(デザイン)までもっていける自身の技能を活用して、よいデザインやアイデアを生み出していきたいと思って、参加しました。

 

Q: どんなアイディアが出たのでしょうか?

片山:さまざまな素材で構成される靴は分解が難しく、可燃ごみとして多くの自治体で処理されています。この現状を変えるべく、マルヤ靴店の地の利と靴作りの技術を活かしながら、靴がゴミにならず循環する仕組み「KOBE CYCLE SHOES」を考えました。

 

ここで作られる靴は、3Dプリンターや新しい足の計測技術を駆使したもので、一人一人の足にあっています。しかもパーツは交換可能。一部が傷んでも、パーツを変えて履き続けることができます。また、これまで履いていた靴は回収して、新しい素材に生まれ変わらせて、また靴素材として使う。そういうサプライチェーンを作っていけたらいいなと考えています。

 

Q: アイディア創出に向けてどのような試行錯誤がありましたか?

福田:私が関西を訪れるタイミングで、片山さんと一緒に京都のファブラボ、MTRL KYOTO(マテリアル京都)に足を運んだりして、サステナブルな靴に最適な素材や、その可能性について議論しました。そのリサーチの機会を通じて新たな素材と出会うことができ、東京発表会にこのような展示を出せました。この展示に使用したボードは、古着のリサイクル繊維でできており、とてもしなやかで丈夫です。

 

※100%繊維系廃材からできたリサイクル素材「リフモ」
門倉貿易株式会社
https://www.kadoco.co.jp/rifmo/index.html
撮影:小野奈那子

 

片山:ただ、実際に靴を作るとなると、課題が多くて試行錯誤が続いています。今年中にプロトタイプを作っていきたいので、素材や仕組みを考えながら、手を動かし、足を動かしたりして、サンプル作りを進めています。また「回収」のフェーズも神戸市の環境局の担当者の方にあったりして、少しずつ進めているところです。

 

プログラム中の様子。メンターの内田友紀さんとオンラインのクリエイティブパートナーと議論する片山さん(左)

 

Q: エングローブのプログラムは2022年1月でいったん終了していますが、その後も福田さんと片山さんの共創が続いているとお聞きしました。どんな動きが起こっていますか?

片山:私は神戸の商店街の活性化に向けた色々な事業もしているのですが、ある企業から、海洋プラスチックの回収と活用した子供向けのワークショップの依頼を受けました。でも、ただそういうものを集めて粉砕してワークショップをやってもつまらない。そこで、福田さんが九州で海洋プラスチックを実際に集めて、啓発動画※を制作されたことを思い出して、相談したんです。なにか一連の流れをうまく伝えられるストーリーが必要だと思っていたので。

 

「あなたのすてたプラスチックごみどこいくの?」
企画制作 九州ごみ減量化推進協議会 https://www.youtube.com/watch?v=BcmlwJVd04g

 

福田:そうですね。まだこのプロジェクトも始まったばかりなのですが、ストーリー作りや人の参加の仕組みのデザイン、最終的なアウトプットまでトータルで考えられる自分のスキルをうまく使って、よい形にしていきたいと思っています。

 

片山:このプロジェクトを先行して進めながら靴にも応用していくことで、回収の仕組みも進展させていきたいと考えています。

 

エングローブでできた縁がつながり、神戸の外からクリエイティブな方が関わり続けてくれるのは、とても素敵な動きですね!今後の展開も楽しみにしています。KOBE CYCLE SHOES もさまざまな課題を解決しながら、協力相手を募りながら、進んでいけるといいですね。

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