株式会社御湯所
地域の記憶を共に繋げていく未来
地域の記憶を共に繋げていく未来

プロジェクトの概要

有馬の文化の持続的醸成に向けて様々な事業を展開している。まずは有馬の街の奥深い魅力に興味を持つ人を増やすために、ガイドツアーを実施。

2024年03月時点

2期生インタビュー 御湯所

有馬山叢 御所別墅を営む御湯所さん。代表取締役の綿貫さんは、有馬最古の湯治宿の文化を受け継ぐ者として、土地本来の魅力や個性を探究し、その知られざる魅力を磨き、真に良いと思えるものを作り上げ、訪れる旅人へと提案することを大切にしていらっしゃいます。昨年度参加したエングローブのプログラムで、その歴史ある存在にふさわしい「fostering timelesnessー時をこえる『らしさ』をつくる」というパーパスを設定し、今年度の事業を進めてきました。

2024年2月の神戸発表会の様子

 

–昨年度の発表会の時には、文化資源の保全に関心を持つ人々を増やして繋げる社会貢献 SNSプラットフォームを構築することで、 有馬をプロモーションしていくというお話だったかと思います。今年は大きく方向転換をしたと伺いましたが、どのような転換だったのでしょうか?

綿貫:今年は、有馬における「『街のひと』増加事業」へということで、有馬の地域にフォーカスして、足元からやっていくことにしたんです。SNSもよかったのですが、次のステップが見えにくいということがあり、いったん、まずはできるところから始めてみようと。ここでいう「街のひと」というのは、有馬の街の奥深い魅力に興味を持つ人のことで、その人自身が街の魅力の核の1つとなるとともに、歴史文化を守り育てる人、と考えました。

 

–今、綿貫さんご自身が有馬の街に感じていらっしゃる課題はどのようなものでしょうか?

綿貫:観光客が増えて、それまで住んでいた人が街を出ていってしまうことですとか、瓢箪の図柄をいれるけど、他で売っているものと同じものを並べてしまうなど、少し表面的な提案が増えているように感じます。また、古い建物をどこにでもあるようなおしゃれなカフェに改装したりするのも見かけます。画一的で魂のこもらないテーマパーク的な観光地になってしまうことを懸念しています。

 

–そういうものに対して、もっと本質的な魅力を耕していく活動が必要だと思われたのですね。

綿貫:そうです。そこで歴史ガイドを核にするのはどうだろうと思うようになりました。ガイドを実施して、観光客だけでなく旅館従業員や地元商店主に対しても街の歴史的・文化的魅力に興味を持ってもらえれば、「街のひと化」を促進できるのではないかと思ったんです。それで、文化に興味を持ってもらう仕組みとして、まずは旅館従業員による観光ガイドと地域での歴史・文化レクチャーを企画しました。

 

–従業員の方がみずから媒介者となって、有馬の歴史・文化を観光客の方や地域に住んでいる方にも伝えていくということですね。

綿貫:今年、さっそく私が従業員向けにガイド研修を行いました。それで、研修を受けた御所別墅の有志の従業員が、宿泊者に対して観光ガイドを提供することができるようにしました。これは社員の研修にもなりますし、おもてなしのときにお客様に話すきっかけにもなります。これを他の旅館にも広げていきたいと思っています。

 

 

–このような活動によって、従業員の方も有馬を深く知るとともに、その魅力を耕し、自ら伝える「街のひと」になっていけるのですね。今後の広がりが楽しみです。綿貫さんは昨年度のエングローブに参加してみて、もっとも良かったことは何でしょうか?

綿貫:やはりパーパスを設定できたのがとても良かったと思います。日々のことが忙しくて、立ち止まって中長期のことを考える時間がなかったので、とてもよい機会になりました。弊社では早速リクルートサイトにも、「当社で働く意義」をパーパスを交えてさっそく掲載させていただいております。去年は従業員全員を対象にした研修でも、パーパスを話すことで、会社の存在意義のようなものが伝わりやすくなったかなと思います。

 

綿貫:スタッフにとっても分かりやすくて納得感があるようで、話をちゃんと聞いてくれたり、会社のやりたいことに賛同を得やすくなったような気がします。パーパスを作るときに、「人を巻き込む」みたいな話があったかと思いますが、その力をすごく感じました。

 

–そんなにも変化があったのですね。

綿貫:実際、2023年の正社員の離職率が6%台にまで落ちました。業界平均は17.4%(2022年)ほどですので驚異的な数字。瞬間風速かもしれないので注意深く見ないといけないですが、成果が上がったと思います。人がやめないからこそガイド事業に人をさけるとか、そういうことにつながっているんです。会社としてギアを変えるきっかけになっているかなと思います。

 

–従業員の方たち自身にとってもわかりやすいし、伝えやすいし、もっと有馬を知ろうというモチベーションになっている感じなのでしょうか?

綿貫:そうですね。それまでは仕事がしんどいとか、時間を減らしてほしいとか、そういう要望が多かったのですが、どうやったらもっと良くなるのかとか、良いサービスやおもてなしをしていくのかとか、もっとポジティブなことに目が向くようになった気がしますね。

 

–みなさんのなかで、パーパスが腑に落ちたことで、それぞれがどう動いていけばいいかという指針ができた感じなのですね。fostering timelesness というのは、メンターの永田さんの社名にインスパイアされたのですよね。

綿貫:去年、ずっと考えていたことをワークショップで棚卸ししたのですが、それをまとめていくときに、「タイムレス」というのがうまく結びついたのかなと思っています。言語化に至らず日々を過ごしておりましたので、このような機会をいただけて本当に良かったです。

 

–去年度のクリエイティブパートナーだった福丸さんには、今年も要所で協力していただいたかと思いますが、どのようなことをお話しされたんでしょうか?

綿貫:壁打ちしていただけるのがとても良かったんです。福丸さんは、こちらが言ったことを分かりやすく言葉や絵で整理してくれます。それによって、どんどん考えがブラッシュアップされていったように思います。あと、発表会のときの資料作りも手伝ってもらいました。今後もちょくちょく遊びに来てくださいとお伝えしています。

 

–エングローブをきっかけに関係が醸成されて、新たな事業に結びついているのが素晴らしいですね。実際に、今年はさっそく海外のお客様向けのガイドツアーも始めたと伺いました。

綿貫:日本の歴史文化に関心のある方など、これまでのお客様の層とは別のお客様にアプローチできる可能性を感じています。ガイドでこそ、作り手の思いなども届けられます。旅行に来られる方の最初のきっかけは日本の美しさなのかもしれないですが、その背後にある歴史や文化を、きちんと届けられたらと思っています。

 

神戸発表会のときに永田さんがコメントで仰ってましたが、有馬を訪れると体が癒やされるだけでなく、新たな知識も得られて、ますますウェルビーイングが高まるようになっていきそうですね。ほかにも、長期滞在者向けのプログラムや仕組みも検討されているという綿貫さん。有馬に800年の伝統をもち、外から来る人たちのこともいつも気を配っておられる綿貫さんだからこその視点がたくさんあります。そしてそれを自分の宿だけではなく、他の宿やコミュニティ全体で底上げしていこうという気概に感銘を受けました。ツーリズムの枠を超えた、面白い展開が待っていそうです。

 

第2期生
株式会社御湯所

プロジェクトの概要

有馬の文化の持続的醸成に向けて様々な事業を展開している。まずは有馬の街の奥深い魅力に興味を持つ人を増やすために、ガイドツアーを実施。

これまでの活動

  • 2024.08
    プロジェクト・エングローブ参加
  • 2023.01
    東京発表会
  • 2023.08
    スタッフ向けガイド研修の実施
  • 2023.09
    旅館スタッフによる旅行者向けガイドを実施
  • 2023.09
    「有馬町歩きガイド」のパンフレット作成・ネット販売開始
  • 2024.02
    旅館スタッフによる英語版ガイド実施
  • 2024.02
    「有馬アートガイド」のパンフレット・アップデート
  • 2024.02
    ネット販売 / OTA連携開始

MEMBERS

  • 綿貫一篤
    綿貫一篤|株式会社御湯所
  • 福丸諒
    福丸諒|クリエイティブ・パートナー
第2期生
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