1期生インタビュー アルタレーナ×西出裕貴
株式会社アルタレーナの八木さんは、昨年度クリエイティブ・パートナーとして参加された西出さんと今年度は一緒に活動されて、Value_wayという新プロジェクトを立ち上げられました。
このプロジェクトのミッションは、「2050年の未来にも世界中のヒトに美味しい珈琲を届ける」というもの。西出さんはコアメンバーおよびコミュニティマネージャーとして参画され、先日の東京発表会では、アフリカ出張中の八木さんに代わって、立派にプレゼンテーションをされました。
-初年度のおよそ半年間にわたるプログラムが終わったあと、どのような経緯で西出さんが引き続き関わることになったのですか?
西出:エングローブが終わったのが2022年の1月でした。僕はアドレスホッパーとして全国を渡り歩きながら仕事をしているのですが、3月に関西に戻るタイミングがあり、八木さんに連絡してみたんです。そうしたら、八木さんから「ウェブ3とかブロックチェーンに興味ある?」と誘われました。ちょうど自分の関心とも重なったので、同日に行う予定だった知財の専門家との相談に同席させていただき、八木さんの活動の方向性を改めて知りました。
八木:そこで「このあと本格的に一緒にやろうか?」って話になったんです。春先くらいから、具体的にどのブロックチェーンでいこうかとか、どんな構想を作ろうかとか、2人で定例会議を開いて、隔週で話していましたね。
西出:そのあと「これをやるならデザイナーが必要だよね」という話になり、友人のデザイナーのアッキー(Akihiro Matsushita)にジョインしてもらいました。それからは3人で話すようになって、今度は「言語が使えるエンジニアが必要だよね」となり、じゃあ口説きに行こうよと決まったんです。秋には幕張メッセで開催されたブロックチェーンエキスポに、Cardano チェーン活用プロジェクトとして参加したのですが、その裏ミッションはエンジニアを入れることでした。それが見事成功して、エンジニアの SAKE さんにも加わってもらうことができました。
-なるほど、そうやって戦略的に、着実に仲間を増やしていったのですね。
西出:そうです。一方で、八木さんがすごくパワフルな方なので、僕ら3人はキャッチアップするだけでいい刺激をもらえるなと。去年、エングローブに参加したのは友人の誘いがきっかけでした。コーヒー飲むのが好きだし、コーヒー屋さんと組もうかみたいな軽いノリだったんですけどね。エングローブがなかったら八木さんにも会えなかったので、本当に恵まれているなと思いました。
– Value_wayはさまざまなミッションをもつ野心的なプロジェクトだと思いますが、どの部分を西出さんが担っていらっしゃるのでしょうか?具体的に教えてください。
西出:まず、優先して進めようとしているのが、Value_way のなかでDAO(Decentralized Autonomous Organization /自律分散型組織)を機能させることです。その時にどうやってトークンで還元できるのかとか、どういうフローを作れば意思決定していけるのかとか、そのあたりを考えています。いま難しいと思っているのが報酬還元のところです。報酬はお金とは限らないのですが、何かが還元される世界を作るのをValue_wayでは大事にしています。ただ、還元する手前のところで文化を作ってしまうと、いざ還元できるとなったときに、それまでやってくれた人への還元をどうするのかとか、そのあたりが課題です。一方でやりたいことを挙手できる文化、そしてそれに伴走して成功体験を積んでもらえる文化を作れば、みなさんの「やりたいこと」がある程度集まってくると思っています。
-私たちはそこにどのように参加できるのでしょうか?何が求められますか?
西出:そうですね、まず、こちらが用意しているプロジェクトに参加してもらうというのがあります。例えばコーヒーカスをつかったお菓子づくりとか、コーヒー対談を企画しているので、そのゲストとして参加してもらうとかですね。あとは「コーヒーの飲み比べがしたい」とか、「おいしい淹れ方を知りたい」というリクエストをして頂いて、それをValue_wayのコミュニティで解決していくのもよいと考えています。それで、このコミュニティに貢献した人に報酬を渡していくことになります。今のところはトークンでの還元を考えていて、最終的にはお金に還元できます。また、トークンの量に応じて議決権も出して、Value_wayの中で意思決定権として機能させたり、他人に渡すこともできるようにしようと考えています。
八木:とはいえ、制度設計はまだまだ不十分です。リアルワールドと対応させるには、法体系とか色々考えなければなりません。今現在、信用経済は「冬の時代」が到来しているといわれていて、実際、分散型がどう着地するかはわかりません。でも、コーヒーを通して実現したいと僕が思っているのは人の根源的な部分の探求なので、そこはぶらさずに、プロジェクト自体を実験として進めていきたいと思っているんです。
-八木さんが信用経済とか、この方向に行こうと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?
八木:怒りでしょうかね。コーヒー業界ってみんな真面目なんです。でも、世界中どこでもそうですが、一般的に飲食店で働く人たちって社会の下層というか。所得もそうだし、身分も低い風潮があるように思っています。コーヒー業界も然り。例えばバリスタで1000万稼ぐ人を僕は聞いたことないですし。コーヒーに限らず、世の中で役に立つ人や必要とされる人たちがきちんと評価されず、対価が払われていない現状がある。僕はそれを変えたいと思っているんです。一人ひとりが変わった結果、社会が変わるというのが僕の中では理想なので、そうなるにはどうしたらいいのかと、この10年くらい色々試みてきました。でも、何かやれば失敗して…という連続でした。
-仕組みから変えたいという八木さんの強い思いから始まっているのですね。これは、八木さんが初年度におっしゃっていた「コーヒーをずっと飲み続けられる社会をつくる」というのと、どのようにリンクしてくるのでしょうか?
八木:今の社会の仕組みだと、経済が発展するほど農業部門は疲弊するんですよね。マーケットに従うと目先を見てしまい、どうしても稼げる方に動いてしまいます。本当は国がそういうのを管理すべきですが、まだまだ仕組みが整っていません。1月に3年ぶりにアフリカに行ってきたのですが、エチオピアでもそういう現状がありました。現地の人たちもずっと嘆いていました。山をどんどん切っていることも、ユーカリを植え続けていることに対しても。ユーカリはアフリカでは建築資材として重宝されるから植えるのですが、そうすると土が酸性に傾いて他の作物が生えなくなり、砂漠化が進んでしまいます。
-そういう悪循環が起こっているのですね。コーヒー生産者たちにとっては、どうなるとよいと思われますか?
八木:僕も正直、答えは分かりません。現状でも幸せなのかもしれない。もちろん衛生環境の整備などはもっと必要かもしれませんが。でもこの先、色々と発展していったときに、彼らにも選択肢があるべきだと思っているんです。だから例えば、さっき西出さんからあったような還元の仕組みをもっと発展させたい。日本でトークンエコノミーを作ろうとしたらすごく大変ですが、アフリカなどのほうが既存の仕組みがガチガチに作られていない分やりやすいし、実際、その動きが起こってきています。
-今後、トークンエコノミーが発展していくと、どのようなことが起こり得るのでしょうか?
八木:たとえば、自分が日本で買ったエチオピアのコーヒーが美味しいと思ったら、エチオピアの生産者に直接チップが支払えるとか。そういうことが起こりえます。
-それはよい仕組みですよね。消費者として嬉しいですし、生産者も励みになることでしょう。今後、コーヒーのコミュニティを広げていくにあたって、どんな人たちにコミットしてほしいですか?
西出:コーヒーが好きじゃなくても入れるコミュニティにしたいと思っています。Value_wayのビジョンに共感してくれれば、期間限定でも入りやすく、忙しい時にはお休みしてもちゃんと戻って来られる場所になるといいなと思います。もちろん動機もさまざまでいいと思っています。コーヒー好きでも、トークンに興味ある人でも、入っている人が面白そうだから参加してみようでも、なんでも構いません。
-間口が広く、自由なコミュニティはすごくいいですね。今後、広報活動はどのように進めていかれるのですか?
八木:まずは3月にアルタレーナバージョンとしてサービスをリリース予定です。CO2削減やカーボンクレジットといった話はこれまで水面下で動かしてきたので、今年はそれらを出していく予定です。それで、小さいけれど、定期的にお互いが情報交換できるようにネットワークを構築していけたらと思っています。
-西出さんが今感じていることとか、今後の目標について教えてください。
今年一年は、試されている期間でもあるなと感じています。「社会的に必要だよね」と評価されるタイミングで、初めて自分の価値を発揮したと実感できると思うのですが、僕の場合はエンジニアやデザイナーとちがって、まだかたちになってないので、今年はValue_wayのコミュニティの中で一つプロジェクトを起こしてかたちにすることを目標にしたいです。Value_wayといえばこれ!と認識されるような看板プロジェクトをたてられると、チームにも社会にも貢献出来ている感じがするので、頑張っていきたいと思います。
-エングローブでの出会いがこのような可能性を秘めているのはとても頼もしいです。今後も応援しています!
プロジェクトの概要
「消費者が主体となり環境価値を生む Value _wayプロジェクト」 気候変動により2050年にはコーヒー生産量が半減するという研究報告を受けて、国際NGOと連携しアフリカでの実態調査を開始。消費者が主体となって消費体験を記録することでCO2排出量が確定する環境価値モデルを採用し、全世界における生産時排出量のデータ化を目指す。さらに、コーヒーかすの再資源化によるCO2排出量削減実証実験を神戸で実施。社外メンバーと共に、生産から再資源化までのデータをブロックチェーンに記録し、経済循環するサービスを準備中。
これまでの活動
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- 2021.08
- プロジェクト・エングローブ参加
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- 2022.01
- 東京発表会
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- 2022.07
- SDGs Challenge に採択
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- 2022.10.26
- ブロックチェーンEXPOにてコンセプト展示
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- 2023.01.18
- アフリカ・ルワンダでの排出量測定完了
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- 2023.03
- 神戸コーヒー循環デモル実証実験実施予定
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- 2023.03
- JICA、IDB Lab の「オープンイノベーションチャレンジ TSUBASA 」採択